正伝沖縄剛柔流・空手道技法/宮里栄一監修・甲斐国征/宮城長順先生の後継者として現在活躍されている宮里栄一先生から直伝されているもの

商品説明
正伝沖縄剛柔流・空手道技法/宮里栄一監修・甲斐国征/宮城長順先生の後継者として現在活躍されている恩師宮里栄一先生から直伝されているもの

昭和62年 212P 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。

まえがき
守礼の那・琉球に発達した空手道は今や正に世界の空手道として更に普及発展の途上にあることは 斯道を修練する同志として大変喜ばしいことであります。空手道が日本内地に導入されて約60余年と いう短期間の歴史の浅さにも拘らず驚異的な発展を遂げ得たことは、底辺の拡大という普及振興の大 義名分下にスポーツとしての競技方式を採用したことが、その大きな要因であったことと考察されま す。
しかしながらその背後には、長い歴史に培われて伝統の中に育くまれてきた武道としての沖縄空手 道の技法が、正しく修錬されているか否や、特に空手道の主体である史実と伝統に培われてきた、正 しい形の修練という本質的なものが見失なわれていくような一末の不安を感じさせられます。このよ うな現況を決っして放置してはならない重要な時期に直面していることを憂慮するとともに、世界に 誇れるべき日本人の心を伝える文化財的な国民武道としての本義さえも忘却されつつあることの潜在 的要因を明確に洞察し、創意反省すべきことを痛感いたします。

本書に集録した技法は、剛柔流空手道創始者、宮城長順先生(1888~1946年)の後継者として現在 活躍されている恩師、宮里栄一先生(沖縄剛柔流空手道協会会長)から直伝されているものでありま す。このような文化財的貴重な技法を正しく継承し次の世代へ伝承することが、我々一門の者に課せ られた責務であり、先達者に対する礼節であると確信するものであります。そのための控としての意 図で浅学非才を顧みず、既に1977年7月1日発行した基礎編ともいうべき空手道剛柔流、を補足・ 改訂し、ここに再び拙ない一編を記すことにいたしました。

勿論、文字や図柄の上での技法習得は能であり、殊に剛柔流空手道に関する技法を書物に表わ すことは大変困難であることも十分承知しながら編集作業に着手したのであるが、多分にもれず未熟 さを露呈し、作業中途にして身をもってその困難さを知らされた思いであります。
武道空手道は、五常の徳・五倫の道を涵養したところの模範的精神であり「健全なる精神の養成」 「正しい技法の体得」「強健なる身体の育成」即ち、人格形成への要素たる、心・技・体の三位一体化 の究極をめざすための理想的な精神修養法・健康法・護身法であると確信いたします。従って、生涯 を通じて、その道を求めて修練を継続しなければならない、必要且つ重要性を説くものであります。

同時に空手道とは、日常生活に密着した適切有効なる体育武道ともいえることからして、現代社会 における存在価値を証明するものであると思います。しかし現実の社会は、一層殺伐化し、厳しい情 勢下にあります。 矛盾のない人生はありえない、矛盾によって、悲しみ、疑い、泣き笑い、そねみ、 喜び、恨み、嘆きながら煩悩の巨海にあって飽くことを知らぬ輪廻の繰返しに流されながら、武の道 を求め行ずることにより、ささやかなる抵抗の情熱をかきたてることで己れの未熟さ非力さを隠そう としているのかもしれません。

余りにも道、の遠きことに戸惑いながらも修練の日々を、道を求めての旅とみなし、己れを道を 求めての旅人と観ずることにより道、とは真理・真実の探究に他ならないと思うものであります。 故に日々の一言一行を修行とし、大地に足をつけて、再び帰り来ぬ 人生道場、を着実に一歩一歩進 み、絶ゆまぬ行を実践する所存であります。
これらの修練課程において、本書があくまでも習得後の控として、いささかなりとも修業者相互の 助成の役目となれば望外の喜びとするところであります。満足なる意を尽し得なかった未熟なる点は 今後の反省と研究の課題として、己れに尚一層厳しく斯道の修練に精進する決意であります。 長い歴史とともに継承されてきた道統を尊守し、これからも長く長く武道空手道を通じて人と人と の出合いの縁を大切にし、史実と伝統を守る正しい沖縄剛柔流空手道の修練に自信と信念をもって励 み、同志とともに体に汗して切差琢磨、今日を充実させ、明日を開拓し、生涯求道を信条として、限 りなき無限の可能性への挑戦をめざしたいと念じています。そしていつの日か、武道空手道の真理、 真実の理想境を彷徨いたいと夢想するものであります。

尚、ここに一応の編集作業を完了することができたのは、何よりも恩師の温かいご教示をいただい たことに加え、終始協力的な活動をしていただいた書家、西田玄豊氏、写真家、田崎州洋氏、黒木屋 印刷所社長、黒木幹雄氏、有段者会会員並びに関係有志各位のご好意とご協力の賜ものであります。 全ての皆様方に対し衷心より感謝し、厚くお礼を申し上げる次第でございます。
昭和62年3月吉日
著者

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